メーキング・オブ・東映ヒーロー3 メカニカルヒーローの世界 (講談社:1987)
アクション音楽の確立
 私は最初から映画音楽をやってみたいと思っていたんです。劇場用映画も何本かやっていますけど、時代劇がほとんどですね。このあいだテレビでみて思ったんですけど、自分がやったなかでも、『眠狂四郎』の音楽は気にいってます。

 最初に東映ヒーローものの音楽を担当したのは、『人造人間キカイダー』ですね。子供番組の音楽というのは以前からやってみたい分野でしたし、子供のためのSFものという意外性に興味をもちましたね。『人造入間キカイダー』では、パンチのきいたアクション音楽を作るように心がけました。ファンの方に『キカイダー』の主題歌が好きだといわれると、なるほどほかの主題歌にはないもの、ある意味でののんびりしたムードがありますね。『ハカイダー』のテーマは、歌の性格もありますが、多分に、キャラクターに助けられたところがありますね。

 『アクマイザー3』『秘密戦隊ゴレンジャー』のように、同時期の番組の音楽を担当したこともあります。音楽的にはかえようとは思いませんでしたが、BGMは多少新しくしようと研究はしました。音楽というものは、その作品の色に左右されるものですから、その作品、作品によって、音楽のイメージもまったくちがってくるものなんです。

 『スパイダーマン』『バトルフィーバーJ』の二作品は、コロムビアとのタイアップでレコード化を目的として作られたものです。当時はサウンドトラックがレコード化されることは、めずらしいことだったんです。自分の音楽がレコードになるということもあって、一段と力を入れましたね。『スパイダーマン』は、打楽器を多用しましたし、『バトルフィーバーJ』は、民族音楽を重視したんです。どちらも組曲として作曲したのでたいへんでしたが、テレビのBGMとしても使用できて、レコードとしても鑑賞にたえうるものを作ろうという意気込みもありましたから、苦労もあまり気になりませんでした。

 レコード化されてもいいように作曲することを心がけるようになったのは、『宇宙刑事ギャバン』のころからですね。この作品は新シリーズの第一弾ということでしたから、作曲はとくに注意しました。

 番組の企画段階で、ある程度物語の設定がまとまってくれないと、作曲にははいれません。作曲する期間というのは、作品の進行状況にもよりますね。宇宙刑事シリーズ≠ナは、『宇宙刑事キャパン』のときは、シリーズの最初ということもあって、二〜三か月くらいの準備期間をもちましたよ。今は、だんだん時間がかけられなくなってきてますので、作曲するときに基本にする素材はまとめておきます。

 それぞれの作品の主題歌は、詞をさきに書いてもらいます。やはり主題歌は、番組の顔というべきものですから、慎重に作りますね。主題歌が悪くて、子供が見なくなることもありますから……。

 主題歌のメロディーをアレンジしてBGMにすることもありますけれど、このごろはあまりしませんね。『大鉄人17』は、主題歌のアレンジ曲をBGMに多用して効果をあげたんです。やはり、その作品のもつ作品世界にあったBGM を作りますから、主題歌のアレンジ曲が効果をあげるものと、それとはちがった方法が効果をあげるものと、いろいろですね。

 楽器の編成は、予算的にきついんですが、うまく工夫します。宇宙刑事シリーズ″のときは、だいたいリズムセクションに六、七人、ブラスはトランペット四人、トロンボーン四人、またはそれにちかい人数を、弦楽器はバイオリン九人、チェロ三人の編成でしたね。『時空戦士スピルバン』ではホルンも加えました。シンセサイザーも多用しましたので、苦労しましたよ。

 アニメ作品のBGMも、「マジンガーZ』『鋼鉄ジーグ』などをやりました。『マジンガーZ』は人気のある作品ですね。気がつくとレコードが再版されていますし、作曲した者としてはうれしいことです。実写ヒーロー作品とアニメ作品の音楽ということで区別するようなことは、とくにありません。巨大ロボットが主人公だから壮大な音楽にするというように、製作側からだされた注文にそうように作曲してます。

 最近では、ビデオのオリジナルアニメ作品の音楽も作曲しています。作っている人たちが、私の音楽のファンだというので、とてもびっくりしましたね。

 自分が作曲を担当した作品は、レコードになったものは聴きますし、その作品がテレビで放送されたときは、かならず見るようにしています。作曲するときも選曲の人と打ち合わせをして、どういう場面で使用されるか想定して作ります。

 自分で作曲を担当した作品で思い出深いのは、『スパイダーマン』『バトルフィーバーJ』です。はじめてレコード化された作品ですからね。

 宇宙刑事シリーズ″も好きです。なかでも「宇宙刑事シャリバン』が好きです。ぜひ、みなさんにも聴いてほしいですね。 これからも、いい音楽を作っていきたいと考えています。  

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