プリキュア挿入歌特集−その5−

渡辺宙明先生インタビュー (3)

3.プリキュア挿入歌解説


−今回の作曲過程についてお聞かせください。

 今回は久々の詩先ですね。詩先でやりますと、初めから藤田さんに言われていました。

 曲のタイトルは最初から付いてました。作詩家が付けたんでしょう。「プリティー・エクササイズ」は体操ができるようなもの、「キュア・アクション」はアクションものという藤田さんの注文でした。(「プリティー・エクササイズ」は)幼稚園などの体操でつかえるようにと。

 詩を最初見た時は、非常によく感じがつかめているというか、いいなと思いましたよ。こういうのをやってみたいと私も思ってたんです。ただ実際にやってみるとね、なかなかこの、言葉の数とリズムとメロディーが合いにくいという感じはありました。難しいですよ、「バリの娘さんは」ですからね(「プリティー・エクササイズ」)。当て嵌めてみると難しいんですよ。ずっとメロ先で来ていたところに、久しぶりに詩先でしたからね。

 でもメロ先でやると私のクセが最初に出ちゃうけれども、詩があると言葉に合わせようとするのでメロディーが変わってくるんですね。これは今回是非聞いて欲しいところですね。詩先で新しい部分が出たのを。しかも可愛い子ちゃんの(番組で)言葉も力んでない楽しい世界なんです、と。

 そうして出来上がったデモテープを、ヤマハの自動演奏の一番いい機械で歌ナシで作ったものを聞いてもらったら2曲ともこれでいいと。複数作ったりしないで今回は2曲ともそれぞれ最初のもので決まりました。アレンジの方を派手にしてくれとか、ちょっとだけここを盛り上げてくれという変更はありましたけど。

−2曲ともサビのリフレイン前に長いソロの間奏がありますけど?

 これは藤田さんの希望です。今回ソロは少し長めにしようということでやりました。全体の尺は3分台じゃなく4分以上あると思うので、割と最近の感じですかね。だんだん長くなっていますからね、最近の歌は。

 この2曲もそうなんだけどABCという形式が多いでしょ? 例えばAA'にしてBをまた16小節とかにすると相対的にCも長くなって全体がものすごく長くなっちゃうから、Bを短く8小節にしてCに繋ぐとCはゆったりできるんですね。またAをリピートしない方法もあります。

 あと後奏はね、歌が終わってからあんまり長くやるもんじゃないじゃないですか。特にやっぱりアクションっぽい曲は意図的に後奏を短めにしてるんです。ほかの人の場合なんかだと歌だけ(後奏なし)でそのまま終わるのもありますね。ワンコーラス1分半というのは結構長いんだけど、それで曲全体が長くなってくるから後奏まで長くしても…ということで案外短いの(後奏)しかつけられないね。

 「神魂合体ゴーダンナー!!」なんかは予定より曲が短くなっちゃった。だから無理矢理最後を引き伸ばしてああいう風(ゴーダンナーの連呼)になった。最初からTVサイズを考えて作曲はできないでしょ?だからまず作って完成した所で計ってみると、ああちょっと短いなということで前奏を長くしたりとか(笑)

 8小節単位でやってくと1分半ってのは結構長いものですから、終わりを工夫しなきゃならない。東映はだいたい短くて1分半なんてくれませんよ。70秒とか80秒がせいぜいでね。エンディングなんか1分10秒だからね。だからその時はレコードの場合とテレビの場合とで尺が変わる場合があります。途中を飛ばして編集しちゃって。
 前はテレビサイズはレコードとは別に録音してたんだけど、経費削減で編集で済ますようになっちゃった。それで昔は途中で切っても繋がるような感じを考えながら作らないといけなかったこともありました。

−キーについては事前に五條さんの声域をあらかじめ聞いていたのですか?

 ええ、そうですね。キーはDまでにして欲しいということでした。だけどハーモニーつけるときはファルセットでFまで出るそうだからと。声優2人が加わって歌う方(「プリティー・エクササイズ」)はCまでにしてくれと。

−ハモリやコーラスなども先生自身で作曲されるのですか?

 そうそうそう。今回のも藤田さんに幾つか場所を指定されてます。それを全部やるか(ハモるか)どうかわからんけど、一応作っておいてくれと。その辺はまた現場でいろいろ変わってきます。

* **

−ではいよいよそれぞれの曲について詳しくお聞かせください。先生お勧めの聞き所なども是非。
−まずは「キュア・アクション」の方からお願いします。


 詩をもらった時に最初ちょっと戸惑いましたよ。この「キュア・アクション」もアクションったってね、非常に軽いじゃないですか。「心が燃えるのってなんかいいね」って(笑)

 他にも、例えばAの最後の「I WANT YOU」も最初「I」がなくて「WANT YOU」だったんです。で、「I」がないとメロディーが付けにくいんで、入れてくださいと私の方でお願いしました。ほかにも幾つか言葉が足りなくて、メロディーを書いた後で足りない所を後からはめこんでもらいました。だから最初の詩とはだいぶ違ってきてるはずです。

−楽曲的にはどんな所が?

 このイントロは勇ましいようだけど実はちょっと違うんですよ。これまでのロボットものなんかだとこれよりももうちょっと力むんですよ。だけど、パンパンテヤタター♪とこうダンスミュージック的な、そういうちょうどいいところへもっていけたと思いますねぇ。戦隊的なものより軽いものと、こぶしも少し入れてやってみたんですね。

 Cの転調はやっぱりサンバルカン的なムードを狙って、同じキーの同じ主音のメジャーへ転調するというのをやりました。「太陽はおお」の所のような、ああいう感じを出したいと思って。

 そうそう、このCのブラスのところ、これは聴き所ですよ! その前のBのところは少し(アレンジを)おとなしくています。最後のミックスの時にギターを上げてやるとかしてもいいかもしれませんね。サビのCを引き立てるために、ここではあまり色々とはやってないんですよ。

−リフCのあとAに戻りますよね?

 これは藤田さんがもう一回Aに戻ってくれと。Aの部分の方がアクションっぽいでしょう。最初はCで終わる形だったんです。Cで終わると少しやわらかくなっちゃうから、現在のAで終わる形の方が勢いがありますね。

−それでは続いて「プリティー・エクササイズ」の方についてお願いします。

 この歌はまず「バリの娘さんは」の「バリの」のところですね。ここねぇ、出だしがドミソという和音の中でラから始まってるんですよ。これは初めてやりましたね。イントロは、ふっと書いたらすぐ出来ちゃった。

 これは今自分で聞いても懐かしい…初めて書いたメロディーだけどなんか懐かしさの込み上げるようなメロディーになったなぁと思いますね。まぁそういう違った面を聞いて欲しいですね。ほんとはね、こういうのがもっとやりたいんですよ(笑) 

 やっぱりねアクションばっかりやってるともはやネタがないんじゃないかっていう。こちらはまだまだネタがありますから。雰囲気的には懐かしいけれど私の音楽としては新しいという感じですかね。

−そう言えば五條さんもそう言っていましたよ。懐かしい感じがしましたって。

 それから随所に違った、特撮モノ的な歌ではやらないようなテクニックというか作曲法でチラチラッとやっていますけどね。「バリの娘さんは、首をくねくね♪」、「くねくねー」「くねくねー」「く、ね、く、ねー」とこれなんかもはじめて出てきたんじゃないかな(陽気に歌 ってくださる宙明先生)。

 私の場合は自分で言うのもおかしいけど、メロディーっていうのは割にスルスル出てくる方なんです。作曲始めた時からもうすらすらメロディーが出てくる。そういう中でも、こういうもの(メロディー)が出て来ると楽しいな!という思いでやれますね。作曲は楽しいという気持ちは今でも変わらないんだから。特に歌のメロディーを作るときは本当に楽しいですよ。

 戦隊ものの時はねぇ、ああいうアクションものの中で今度は一発驚かしてやろうと思ってもなかなかそういうのが出てこない。結局同じようになっちゃうのね。それはそれで大変ですけどね。先日のゴーダンナーはあっちはあっちでうまくいったんですけど、特に今度は「ああ違ったのが出来たなぁ」と。 聞き所はそういうところですね。

 「体だけじゃダメ」というこれもね、今まではやったことのないハーモニーとメロディーの関係です。ミミミミラララミというのはね、初めてやったんだけど、これも自然に出て来て…、ああでもこれはどっかでアクションもののBパートとかサビとかでチラッとは使ってるかもしれませんね。だけどこれは(一曲通して)そういうムードだけで行けちゃうから楽しくできましたね。

−ABCの間にそれぞれ繋ぎの部分がありますけれど?

 これは藤田さんに伸ばしてくれといわれたので…。私なんかここは繋ぎがなくてもね、メロが繋がっていってもいいんじゃないかと思ったんだけど入れてくれって言うんでやってみたんです。最初作った時は繋がってたんですよ。そういえばアレンジでスライドホイッスルを入れたのも藤田さんの注文でした。サンバホイッスルかとも思ったけど、あれではきつすぎると言うことで。

−Cの詩の繰返しフレーズは最初からあったんですか?

 これは繰返しがなかったのを私が繰り返しにしましたね。そうしないと言葉が足りないんで、3行しかないんじゃうまく合わないんですね。最後の「必殺、必殺、必殺」の繰り返しも私がやったんです。3人で歌うというのは聞いてましたので、それを少し意識して繰り返しました。ハモらせようとかいう話はその後からですね。

 それにしても、最後にいきなり「必殺技」なんて出てきてね、なんでかわからないというか、変わってますね。この歌は逆にへんてこりんでわけがわからないのがウケるのかなぁなんて…(笑)。
 

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